「K2」で大ヒットを飛ばしたデザイナー、アダム・カルーザが今度は洞窟をテーマに作った。
プレイヤーは冒険家となり、深い深い洞窟へと進んでいくことになる。
冒険家・探検家がテーマということで、「K2」の流れを汲むゲームとして期待している方も多いのではないだろうか。
果てして、その内容はどうだったのだろうか。
まず、最初に言っておくと「ケイブ」は、「K2」とは大きく内容の違うゲームだ。
シリーズ作というわけではないのだから、当然と言えば当然だ。
しかしながら、遊んでいただければわかるのだが、そのスピリッツのようなものは非常に似たものを持ったゲームとなっている。
では、システムを中心に細かいところを具体的に見てみよう。
プレイヤーが手番ごとに行えることはさまざま。
タイルを引き洞窟の奥を目指す、基地でリュックの中身を入れ替える、地底湖へ潜り調査を行うなどなど、いかにも「らしい」アクションがいくつも用意されている。
プレイヤーは、手番ごとに5ポイントのアクションポイントを消費することで、それらを組み合わせて実行していく。
移動と回復という二種類のカードを選んで出すことで進めていく「K2」と比べたら、大きく異なる。
このアクションポイント制というのは、実はクセモノで、ついつい長考しがちになってしまうという欠点がある。
しかし、この「ケイブ」に関しては、それほど心配する部分とはなっていない。
なぜなら、手番中におけるアクション選択において、プレイヤー間のインタラクションが比較的薄いからだ。ざっくりと言ってしまうと「自分のやりたいようにやればいい」ということになる。
ここで、「インタラクションが薄い」という部分に、また違った心配を覚えてしまう人もいるかもしれない。
しかし、その心配は杞憂である。
「手番におけるアクション選択」においてインタラクションが薄いのであって、ゲーム全体を俯瞰した場合、プレイヤー間の駆け引きも十分に味わえるからである。
洞窟は、タイルを引くことで作り上げられていく。このタイルのめくられ方によっては洞窟の内部、さまざまな地形に偏りが生まれることになるのだが、例えば、あるプレイヤーの選んだ道が非常に魅力的な地形、そう、どのタイルも得点に繋がるタイルが続いていたとする。
はたして、その状況を他のプレイヤーは「よかったねー」と素直に言ってくれるだろうか?
当然、その地形に対してのアプローチを考え始めるはずだ。
地底湖が多かったなら、潜るための酸素ボンベを抱えて向かうだろう。
段差が多かったなら、ロープを背負ってどんどんと潜り、追い抜くことを狙うだろう。
先の見えない先行プレイヤーよりも、後から追うプレイヤーの方がこのあたりは圧倒的に有利だ。
ようは「やりたいようにやって」、他のプレイヤーへのゲーム的なアプローチができるということになる。
少し装備品の話が出たところで、このゲームにおける基地とテント、そして装備品について触れてみたい。
「K2」でもテントは登場したが、このゲームでのテントは、意味合いが大きく異なる。
「K2」では、単純に体力低下を防ぐためのものだったが、「ケイブ」でのテントは、設営することで簡易的な基地として扱うことができるようになる。
では、その基地でなにができるのか?
それが「装備品の用意」である。
プレイヤーのリュックには限りがある、毎手番ごとに容赦なく減らされる「消耗品(食料)」、地底湖を調査するために必要な「酸素ボンベ」、奇岩を撮影するための「デジカメ」など、限りあるスペースを有効に活用し、自分にとってもっとも相応しいとおもう装備を持って洞窟を進むことになる。
これらの装備品の入れ替えや補充ができるのが「基地」なのだ。
そして「テント」。「テント」は、リュックの中のスペースを通常の装備品の2つ分を使ってしまうのだが、テント自体に4つの装備品を入れるスペースが用意されており、そこに装備品を選択し、詰めることができる。そして、洞窟の先で、テントを設営することで、その4つの装備品を補充することができるようになるのだ。
手番ごとのアクションポイントが短期的な戦略の組み立てとするならば、この「装備品をどう用意するか」というマネージメントは中期的な組み立てと考えることができるのではないだろうか。
このあたりのバランスは、本当によくできている。
メインとなる二つのシステムを見ただけで、「K2」と大きく内容の違うゲームであることはわかってもらえただろう。
しかし、似たスピリッツを持ったゲームであることも冒頭に書いたとおり。
それはどういう部分なのか。
「テーマの再現性からくる興奮」と「スリル」の二点だろう。
私は、実際に登山もしないし、洞窟に潜ったりもしない。
しかし、それぞれ「こういう世界なんだろうな」というイメージは割と具体的に持っている。
登山なら、移り変わる天候を見極め、タイミングを計り頂上に向かってアタックをかける。
洞窟なら、先の見えない道を進み、狭い通路を進み、段差を下り、奇岩に目を奪われる。
そんなイメージを「K2」も「ケイブ」も実にうまく、そして気持ちよく再現してくれている。
だからこそ、ゲームをやっていて熱中し、興奮できる。自然とドラマを感じられるのだ。
「スリル」も大きな魅力だ。
「K2」では、体力(順応度)を失った登山隊は、容赦なくゲームから脱落させられる。しかし、安全な選択ばかりしていてはゲームの勝利からは遠ざかってしまう。このギリギリ感のスリルはたまらない。
「ケイブ」も同様だ。
舞手番必要となる「消耗品」が尽きてしまうと、その冒険家は基地を目指して戻ることしかできなくなる。これは大きなダメージだ。
しかし、決定的なのはゲーム終了の条件を満たしてからの3ラウンドだ。プレイヤーは、ゲーム終了の条件が満たされたら、その後の3ラウンドの間に基地へと帰還しなければならないのだ。もしも、帰還できなければ、ゲームから脱落となってしまう。ほかのプレイヤーの状況を見て、最後の最後でもう一枚タイルをめくり、さらに先へと進まなければならない・・・そんなこともあるだろう。このスリルはやはりたまらない。
テーマの再現性と雰囲気のよさ、自由度の高さによる熱中度の高さ、ほかのゲームではなかなか味わえないスリル感。
「ケイブ」は、戦略性の高さやプレイヤー間のインタラクションというものよりも、そういったものを高い位置に位置づけることによって、ゲーム全体の完成度をぐぐっと引き上げることに成功しているタイトルだと言える。